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不正競争防止法について-(2)

  • それでは、もっと分かり易く理解してもらうため、実際に法廷で争われた事例を挙げてご説明していきましょう。

    【事例1】 タレントの芸名と企業グループの営業表示に関する事例(混同惹起行為)(不正競争防止法第1項第1号)


    これは、タレントの高知東急(たかちのぼる)の名前が、「東急」という周知表示を侵害しているかどうか、また、企業としての営業表示と個人名との間で誤認混同が生じるといえるかどうかについて争われたケースです。
1) 原告:「東急」グループ主張内容→「東急」という商号は周知のものであり、混同を生じる。
2) 被告:タレントの高知東急(たかちのぼる)
主張内容→(1)不正競争防止法第19条1項2号の規定により、「高知東急」は、自己の氏名を不正の目的なく使用する行為であり、不正競争防止法の適用除外の対象となる。
3) 裁判所の判断
(1) 混同について広義の解釈を認めた。
広義の混同(経済的又は組織的な何らかの密接なつながり)とは、企業間では、典型的には系列関係や提携関係を示す場合が多いが、それのみに限定されるものではない。本事例のように、周知表示の主体が企業であり、類似表示の使用者が個人の場合には、
イ) 類似表示の使用者が周知表示の主体に所属している
ロ) 類似表示の使用者の活動が、周知表示の主体によって支持される又は類似表示の使用を許諾されている
ハ) 類似表示の使用者が周知表示の主体の資金的援助を受けている
等の関係をも含むべきである。
(2) 更に、原告グループが、広報活動としてのコンサート等の芸能に関連する催しを幅広く行っていることを考慮すると、被告の「東急」なる表示は、原告およびグループを連想させるものである。
(3) 被告の主張である-不正競争防止法第19条1項2号の規定(自己の氏名を不正な目的なく使用する行為は当該法の適用外である)-については、芸名の場合には自然人の氏名とは異なり、生まれながらに有しているものではなく、選択可能であることから、他人の周知の営業表示を無断で使用できない。

【事例2】 著名表示(マクセルおよびMAXELL)冒用行為による差止請求事例
(不正競争防止法第2条第1項第2号)

これは、原告(日立マクセル)が被告(株式会社日本マクセル)に対し、その著名表示(マクセル、MAXELL、maxell)の使用差止を請求した事例です。争点のポイントは、被告の営業表示は原告の著名表示と類似するのかどうか、不正競争(フリーライド、ダイリューションの存在の有無)といえるのかどうかです。

1) 原告:日立マクセル株式会社の主張内容→マクセル、MAXELL、maxellは著名商号および商標であるので、使用の差止を要求する。
2) 原告:株式会社日本マクセルの主張内容→不正競争防止法2条1項2号(著名表示)の要件に形式上該当していても、ダイリューション(希釈化)、ポリューション(汚染)、フリーライド(ただ乗り)に該当しない場合には不正競争性はない。被 告による被告商品表示は当該各要件に該当しない。
3) 裁判所の判断
(1) 原告標章は著名といえるかどうか→日本国際知的財産保護協会がH10年に発行した「日本有名商標集」や電子図書館における「日本周知・著名商標検索」にも原告の当該商標は掲載登録されており、原告商標はいずれも著名といえる。
(2) 類似かどうか→被告表示の「株式会社日本マクセル」については、日本は国名を表示するため識別力は弱い。識別力が強くなるのは、「マクセル」である。この表示は原告の「マクセル」とは全く同一であり、また、「MAXELL」および「maxell」とは呼称が同一であるから原告表示とは同一であるといえる。
(3) 不正競争に該当するかどうか→
イ) 原告表示は、「Maximum Capacity Dry Cell」、つまり、創業時の製品である乾電池の商品表示の最初の3文字ずつを用いた造語であり、原告の表示として独自性がある。
ロ) 原告は、優れた性能を備える商品の開発や各種の賞を受けた独創的な広告によって評価を受け、商品の売上高を向上させてきたものと認められ、原告商品等表示は良い印象を備えており、顧客吸引力があると推定される。
ハ) 被告による、被告商品等表示の使用は、ダイリューション(希釈化)およびフリーライド(ただ乗り)に該当すべきである。
二) 従って、被告は上記ハ)によるダイリューション、フリーライドに該当し、不正競争に該当する。

【事例3】 営業秘密侵害に関する事例(最高裁での営業秘密侵害罪被告事件)

これは、日産自動車の元従業員が、いすず自動車に転職する際に、日産自動車の営業秘密を持ち出したことについて、被告人に不正競争防止法第21条第1項第3号に規定されている図利加害目的(不正の利益を得る目的)があったかどうかについて争われたケースです。

1) 原告:被告人がなした行為(被告人が自宅において、会社PCに保存されていた、被告人が作成したマニュアル、ツールファイル、経営会議その他の会議資料、未発表の仕様書等(会社では、これらは営業秘密として管理されていた)を、私物のハードディスクを介して私物のPCに複製する行為)は、業務を遂行する必要はなく、被告人の業務遂行以外の目的によるものである。
2) 被告:自宅での複製は、①業務関係データの整理を目的としたものであり、更に②専ら記念写真の回収のためであり、正当な目的によるものである。
3) 裁判所の判断
(1) 被告人の自宅での複製行為は、被告人が複製した各データファイルを用いて、その業務を遂行した事実はない上に、会社PCの社外利用等の許可を受け、自宅に会社PCを持ち帰っていた被告人が、その業務遂行のために、敢えて会社PCから私物のハードディスや私物のPCに上記各データファイルを複製する必要性も合理性も見いだせない等からすれば、上記の複製の作成は、被告人の業務遂行以外の目的によるものと判断し、被告人の主張を排斥した。
(2) その上で、本決定は、被告人による複製は、勤務先の業務遂行の目的によるものではなく、かつ、その他の正当な目的の存在をうかがわせる事情もないとの事実関係から、被告人が、被告人自身又は転職先その他の第三者のために退職後に利用する目的としたものであったことが合理的に推認できるものとし、結論において、「不正の利益を得る目的」と認定した(不正競争防止法第21条第1項第3号「不正の利益を得る目的」)

(以上)

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